貴州のほぼ真ん中に位置して省都、貴陽、人口は約500万人。市内に森林が多いことから林城の別名があります。太陽が貴重なもので、貴陽という名前が名づけられたと言われています。貴州一体どこにいるのかはピンと来ない人も多いと思いますが、四川の隣、重慶の下に位置します。なぜそこへと聞かれたこともしばしばありますが、四川出身のわたしには、故郷隣の雲南、貴州には天然の親近感があります。名古屋大学で博士号を取得したあと、東京で六年間の特派員勤務を終え、縁があって、少数民族文化に惹かれ、2019年9月から貴州民族大学で日本文学を教えるようになりました。
貴陽は標高1000mの高地にあり、夏は扇風機さえ要らないほどの涼しさ、冬も寒いとはいえ、氷点下になることに滅多にありません。
貴州は山だらけです。日本人がなじみやすい桂林の山水は実は貴州も同じ脈で、カルスト地形です。研究室から外を眺めれば、天然の水墨画が目の前に現れます。貴州も少数民族が多いところであって、大学も民族大学で、少数民族の建築や、鮮やかな民族衣装を着ける学生も近くの村民も時々見かけます。
研究室からの眺め
日本の円借款で建てられた貴州民族大学研究教育棟
一方で、交通に不便な地形であるため、歴史上、流刑の地にもなったこともありました。日本の幕末運動に大きな影響を与えた陽明学の祖・王陽明は、現在の貴陽市修文県に更迭させられた時に陽明学を生み出したそうです。長らく経済発展から取り残されていましたが、近年はインフラの整備のおかげで目覚ましい発展を遂げ、ビックデータの都市でも知られているようになっています。
貴州の観光資源も多い、奇抜な山水、神秘な民族文化、世界的に著名な旅行ガイドブック「ロンリープラネット」が発表した「Best in Travel 2020」では、2020年に訪ねるべき世界10地域のうち、中国で唯一、選ばれたところでした。多くの見どころ中でも、特にお勧めは貴陽から車で約2時間のところにあるアジア最大級の滝・黄果樹瀑布です。
落差77.8m、滝幅81mもあり、有名なパワースポットです。
黄果樹瀑布
グルメに関して、日本でなじみのサンラタンは、ここ貴州が発祥。唐辛子の消費量、生産量ともに中国第一位を占める貴州は、辛くて酸っぱい料理が多いのです。その代表格は酸湯魚という苗族の伝統料理。野生のトマトと唐辛子をベースに川魚を煮込んだもので、肉がホロホロと柔らかく、スープもエンドレスに飲めます。また、1972年、日中国交正常化の共同声明に調印した田中角栄元首相と周恩来元総理の乾杯酒として知られる茅台酒の産地でもあります。ぜひ貴陽にお越しください。
皆さん茅台酒で乾杯できる日を心待ちにしています。
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