板垣與一著 論創社
キーマンの書棚
学問研究の姿勢説く
安中市子ども食堂連絡協議会代表
宇佐見 義尚(74)安中市松井田人見
戦前に植民地経営を研究し、日本軍占領地の軍政にも携わった著者は、国際政治学者としてアジア諸国のナショナリズム研究をライフワークにしていた。
本書は一般向けに書いたエッセイを再構築したもので、学問との向き合い方などが書かれている。
本書は
①人との出会い
②本との出合い
③自分との出会い
の三つがあると紹介。
宇佐見さんは「本との出合いは人生を決める大きな力を持っている」と話す。
高崎経済大で経済を学んだ宇佐見さんは、たまたま手にした著者の本
「アジアの民族主義と経済発展」に深く感動し、直接訪ねたことがきっかけで
弟子入りした。亜細亜大大学院時代、著者の指導の下で研究を続け、
本書の編集にも関わった。
2003年に亡くなった著者が残した蔵書約2万冊のうち、半数の約1万冊と遺品などを
引き継ぎ、05年から自宅内で蔵書を公開する。交流のあった研究者の蔵書も資料も
引き取り、世代を超えて気軽に閲覧できる環境を整えている。
「読書離れは大変な危機。使い勝手のいい図書館を整備し、
読書へ回帰する流れをつくりたい」と夢を語る。
宇佐見さんは大学卒業後、高崎市の知的障害児施設の設立に関わるなど障害者福祉を研究。現在は子ども食堂の運営や生活困窮者への食材配布に携わっている。
著者から指導を受けた社会科学の方法論と自身の研究分野である福祉を重ね合わせ、
人間の生き方について探求している。
「この本には先生の人生が込められている。
謙虚さを本当の意味で突き詰めるのが社会科学の神髄かもしれない。」
恩師が亡くなった今も、本を通じて学者としての姿勢を学び続けている。(田島孝朗)
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